新潟生まれ新潟在住、ゲームシナリオライター兼小説家。
主に女性向け恋愛ゲームを製作。
小説は恋愛からファンタジー、歴史まで幅広く執筆中。
「おはようございます」
「わかなさん、おはよう」
天野さんに挨拶をしてから、そのまま今日は事務所のスタジオに入る。
陽気な感じのライターさんとカメラマンさんが打ち合わせをしているところへ行く。
「おはようございます。本日お世話になりますわかなと申します」
「かわいいねー。君がわかなちゃんか。店のナンバーワンだけあるね、癒し系かな」
いきなり社交辞令で褒められて、ちょっとびっくりする。取材ってこんなものなのだろうか。
「あ、ありがとうございます。それで、今日のスケジュールは……」
カメラマンさんがまず笑顔で私に答えてくれた。
「このあともう少し俺らで打ち合わせしてから、まず撮影ね。顔は指で隠すくらいにして。それかアイマスク。好きな方選んでくれて構わないよ。下着は何色? 白持ってきてくれた?」
「はい、着替えてきますね」
「そのあと、プレイ取材ね。裸撮るけど、大丈夫だよね? そのときはアイマスク着用でお願いします」
てきぱきと事が話が進んでいく。
「じゃあ、準備ができ次第スタジオに戻ってきて。写真撮影始めるから」
「はい、よろしくお願いいたします!」
指で目を隠しながらも、なまめかしいポーズを要求される。服をぎりぎりはだけたり、下着をチラ見せしたり、思わせぶりな写真が撮られているのだろうな、と想像しながら臨んでいた。
「顔だけこっちに向けて。ちょっと……首をかしげて」
次々と要求に応えていくと、二十分ほどで撮影は終了した。
「それじゃあ、次はプレイ取材でーす」
適当なホテルを取ってあるからと、近所のラブホテルまで車で移動する。しかしホテルに許可は取っていないので、ライターさんと二人だけの取材となる。
「私、どうしたらいいですか?」
「いつものようにプレイしてくれれば、俺がそれ記事にするから。写真、とりあえず撮るね」
「はい」
おもむろにライターさんが脱ぎ始めたので、私はプレイの準備を先にしておくことにする。
シャワーを浴びているところや、ライターさんのお腹の上に乗っかって手コキをしているところ、素股やフェラの写真を撮っていく。もちろん、雑誌に載るときにはモザイクがかかる。
「じゃあこのあとプレイね」
「はい」
「えっとさ……」
妙な空気感でライターさんが切り出してきたので、ふっと振り返った。
「いつも通りのプレイでいいんだけど、どうせなら気持ちよくなりたくない?」
「は?」
「五万あるから、本番させてよ」
(何言ってるのかな、このひと。お客さんでもそんなことしないのに)
途端に冷めた頭で思考を巡らせる。でも、表面では笑顔を作って笑ってあげた。
「何言ってるんですかー、取材時間オーバーしちゃいますよ」
「わかなちゃんだったよね、これオーケーしてくれたら、俺お客として通うからさ」
「やだー、恥ずかしいです」
「俺は本気だよ! 俺、八島っていうんだ。これ、名刺」
差し出された名刺には、確かに風俗情報誌の専属ライターと書いてあった。どうも本気らしい。
「わかなちゃんマジ可愛いし、それにプレイもめちゃくちゃいいんでしょ、知ってるよ」
「……えっと」
「だからさ、俺を一番のお客にしてよ」
「八島さん、先にプレイしちゃいましょ? お話は、それから!」
私はがばっと八島さんに抱きついて、恋人のようにじゃれて甘えた。胸板に頬ずりして、乳首をいじる。
「わかなちゃん、俺、勃起してきた」
「分かってますよ、どうしたらいいですか?」
「と、とりあえずフェラしてよ。フェラテクすごいんでしょ?」
「ふふふ、それだけじゃないですから、一回戦で終わるともったいないかもしれませんよ?」
喉の奥までディープスロートして、ゆっくりと裏筋をかたく尖らせた舌先で舐め上げる。亀頭を舐め回し、ときどき軽く歯を当てて上目遣いに視線を送ってあげた。
「わ……わかなちゃん、俺、イキそう……っ!」
その言葉を言い終わる前に、八島さんはもう射精していた。
ぶわっと苦い液体が口の中に広がる。
「ふふ……」
どろり、とした精液を口から吐き出すとき、掌に受けて相手に見せてあげる。
「こんなに出ちゃって、相当ですね?」
「う、……わかなちゃん、すげーうまいよ……」
「ありがとうございます」
もう取材どころではなさそうな感じなのが気になったが、一応は仕事なのだから後できちんと記事にしてくれるだろう。そのためにも最高のサービスをしなくては。
「もう一回戦行きますか?」
「……俺、一回しかイケないんだ。それに、取材時間ももう残り少ないし……」
確かに、シャワーを浴びて、写真撮影をして、それでけっこう時間を費やしてしまったから無理もない。
「記事にできます?」
「もちろん。俺だってプロだからね」
「よかった!」
「じゃあ、帰ろうか」
「ええ」
「このあと、仕事?」
「そうですよ」
私がシャワーをもう一度浴びに行こうとすると、八島さんが私の腕を強くつかんだ。
「わかなちゃん」
「……はい?」
わざとすっとぼけてみせる。
「俺、本気だから」
「……何がですか?」
こういうときはとにかく鈍感や天然を装うしかない。お客さんからのこういう行為は嫌というほど経験してきた。だから対応の仕方も大体分かっている。
「これからも会ってよ?」
「お客さんとしてお店に来られるなら、全然構いませんよ」
「違う、そういうんじゃなくて」
「……」
八島さんは見たところ、二十歳半ばくらいだろうか。私とあまり歳は違わないだろう。でも仮にもこういう世界のライターなんだから、取材先の風俗嬢に本気になることないのに。
「俺と付き合ってよ、わかなちゃん」
「……それは」
「俺はこういう仕事だけど、稼いでるし。わかなちゃんを普通の仕事に戻すことだってできるよ」
「あのう」
「本気だから」
返答に困ることだったけど、本気だ本気だと言われたことは何度もあったので、いつものやり方で返す。
「お店でお待ちしてますね! だって私、八島さんのことまだよく知らないですし!」
「……お店に行ったら、いいんだね」
(本気だな……)
「分かった、今日はここまでにするね。帰ろう」
ここまで執拗な人は初めてだったので、とりあえず帰ったら事務所に相談しなくては、と思いながら別れた。
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第9話 前編は7月30日公開です
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