新潟生まれ新潟在住、ゲームシナリオライター兼小説家。
主に女性向け恋愛ゲームを製作。
小説は恋愛からファンタジー、歴史まで幅広く執筆中。
「キス、しましょう?」
恋人のようにそれとなく誘ってみる。前戯からゆっくりたっぷり時間をかけて高まらせ、最後は寝かせてしまおう。
「わかなちゃん、本気だね?」
「ええ、もちろん」
この際何が本気なのか分からなくてもどうでもいい。
私は風俗嬢で、お客さんにサービスを提供する人間だから。
「もっと、舌……ください」
ベッドの上で裸身を絡ませながら、抱きしめ合いながらディープキスを繰り返す。私の腰のあたりには勃起したペニスが早くも当たっていて、ときどき握りしめて興奮を誘っていく。
「う……わかなちゃん……」
相手の声が恍惚となったところで、全身にキスを落としていく。首筋から胸、乳首、腰骨を軽く噛み、太ももの内側まで到達する。足を広げさせて、股の間から上目遣いで流し眼をしてあげる。
「この間より、エロい……ね」
「ふふ……」
ペニスはすでに期待に満ちて先走りの液体をあふれさせている。
これからフェラチオの予定だけど、まだイカせるつもりはない。
「天国に連れて行ってあげますよ」
「……わかなちゃん」
音を立ててペニスの根元からキスをしていく。手は睾丸を優しく転がしながら、亀頭をかたく尖らせた舌でそっと舐める。
「う……っ」
「気持ちいいでしょ?」
「マジ、やばい……入れたい……っ」
「まだまだですよ」
ペニスを口に少し含み、しゃぶるように舌を動かす。硬く熱くなってきたところで唇を離し、ローションを掌で温める。
「え……、素股……?」
「そうですよ」
「だめだよ、素股されたら俺絶対にイッちゃうし。入れさせてよ」
「じゃあ、こうしましょう」
「……なに?」
「二回戦できたら考えてあげてもいいですよ?」
「マジで……」
「とりあえず気持ちよくなっちゃいましょう?」
私は有無を言わさず下半身にまんべんなくローションを塗りつけ、八島さんの身体にまたがった。
騎上位素股は私が一番得意とするところだ。滑りがいいので、ゆっくりと身体を前後させる。これだけでもローションのぬるぬると股間の柔らかさでかなり快感を得られるはず。徐々に激しくしていく。
「うわっ、イクっ、イクからっ……!」
ちょっと激しくして、五分ほどで八島さんは絶頂に達してしまった。熱くて白い液体がローションに混ざってどろどろに彼の身体を汚していく。
「いっぱい出ましたね?」
「き、……気持ちよかった……」
「ありがとうございます」
「まだイキたくなかったのに……」
「大丈夫ですよ。とりあえず、ローション落としてすっきりしましょう?」
ぬるめのお湯を張った湯船でローションを洗い流し、ベッドに横たわらせる。
「二回戦、復活する間までマッサージしますね」
「ありがと……」
頭の先からつま先まで、念入りなマッサージをする。すると、予想通り足首を揉み終える頃には、疲れてイッてしまった彼は寝息を立て始めた。
(作戦勝ち……)
ほっとする。
時計を見ると、ここまででちょうど百分だった。そろそろ私自身も上がる準備をしなければならない時間だ。
服を着て、化粧をし直し、髪を乾かすのに十五分はかかる。
プレイ終了、とみていいだろう。
一応、耳元でささやきかける。
「八島さん? このまま寝ていきます? 私、次の仕事があるのでお先に失礼しますけど、いいですか?」
「……うん」
ほとんど寝言のような返事が返ってきたので、了解を得たことと認識する。
「ありがとうございました。またお願いしますね」
私は準備をしてホテルを出、そのまま次の仕事先に向かう車の中で事務所に連絡をする。
『困ったことになったね』
電話の向こうの天野さんはそう言う。
『それは立派な脅迫だよ。店は出禁にするし、彼の仕事先にも連絡を入れておくね』
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
風俗嬢だから何をしても許されると思ったら大間違いだ。私たちは社会の底辺者でも何でもない、無数にある仕事のうちで、ただのひとつの選択をした人間たちにしか過ぎない。私は少なくとも、この仕事が好きで愛着を持っている。続けたい。ここなら、私の特性が生かせるから。
(……そう、か)
思いがけず、初めて行き着いた結論。
誇りとはちょっと違うかもしれない、だけど、プロ意識を持ってやっていることは確かだ。どうせやるならとことん突き詰めていきたい。昼間のぼーっとした仕事では得られない何か。
『わかなさん?』
「あっ、はい」
『大丈夫? 急に黙り込んじゃったけど』
「それよりも、くれぐれもこのことに対しては、よろしくお願いしますね」
『うん、任せておいて!』
天野さんは断言してくれたので、安心して次の仕事に行けた。
その日の最後の仕事、そのお客さんの名前を確かめる。
「エンドウさん……」
何となく、胸騒ぎがする。
今日は金曜日……エンドウさんはいつも土曜日なのに。
(何かあったのかな……)
疲れた身体を引きずりながら、私はエンドウさんの待つホテルへと急いだ――。
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第10話 前編は8月13日公開です
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