アンダーグラウンドシティ・ベルリン在住。
世界各地から集まった変人たちに囲まれ穏やかでない毎日のなか執筆。小説のほか、性に対してオープンすぎるこの街で繰り広げられるセックスパーティやセックスワークショップなどへの潜入取材依頼も受付中。
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「すごく……肌がきれいなんだね。柔らかくて、すべすべしていて、吸い付くみたいだ……」
「ふふ、そうですか?」
神田は膝に乗っているアンジェの身体のラインを確認するように、背中を、お尻を、くびれたウエストから、はち切れそうな胸元までを下から上へ、上から下へと撫で回す。男の熱い息がアンジェにかかる。神田は両方の乳房を揉みしだきながらキスを浴びせ、そのままアンジェを軽く持ち上げるとそっとベッドへと寝かせた。開かれたままのアンジェの両脚、チャイナドレスの裾がまくれて黒いレースの下着があらわになる。そのコントラストでアンジェの内ももはさらに白く見える。神田はアンジェの左脚を持ち高く挙げると、ふくらはぎから太ももへとさわさわと舌を這わせ次第に局部へと近付いていく。
そして
「あんっ」
下着の上からアソコを甘噛みされアンジェは思わず声を出す。薄い下着はあってないようなものだ。その刺激にアンジェは背中を一瞬反り返らせる。
神田がそんなアンジェを見下ろしながら言う。
「ほら、下着がベトベトになってしまうよ。脱ぎなさい」
実はもうとっくに濡れているアンジェ。
「……はい」
ふだんから受け身がちな(といってもここ最近夫とはセックスレスなのだが)アンジェはつい神田にされるがまま、言われるがままに下着を取る。
(やん、あたしお客さんにサービスするどころかこんなのふつーに前戯を……!)
ノーパンミニチャイナになったアンジェの両脚をもう一度大きく開かせ神田は顔を埋める。
「神田さん……、あのっ」
神田の舌がチロチロとアンジェのアソコをなめ始める。
「んっ、ん……」
舌を広げてざらりとなめ、時折柔らかい唇で優しく……しかし決して核心は突いてこない。
「……あ、あの、神田さんは、あたしのお客様ですから……あたしがもっと……」
と言いつつもアンジェは熱い吐息をもらしながら、神田のじらしテクに腰をヒクヒクさせている。
(何年ぶりかしら、こんなの……!)
神田はそんなアンジェを見て満足そうな笑みを浮かべると、さらにアンジェの局部を指で広げ、ヒクヒクする下腹部に合わせるかのようにちゅばちゅばと吸いつく。
「あっ、あっ……あっ……」
しつこく吸われ腰がとろけそうになっているとき、
「ぁん!」
突然一番敏感なところを舌の先で突かれ同時に指を二本か三本いきなり挿入された。
(ヤバい……気持ちイイ!)
クチュクチュ音を立てながら快感が下半身から突き抜ける。
(最初のお客がこんなにテクニシャンだなんて……このままイッちゃいたい……!)
しかし興奮で朦朧とする頭にキーの忠告がよぎる。
ここでイッてしまっては、元の”佳子”の姿に戻ってしまうのだ。
(それだけは……ダメ!)
アンジェは股の間にある神田の頭を優しく手で持ち上げる。
「神田さん……次は、あたしの番……」
アンジェの愛液で口のまわりをべったり濡らした神田の瞳が期待できらりと輝く。
神田をそっとベッドに押し倒す。アンジェは股の間で四つん這いになった。右手で睾丸を優しく転がしながら、左手でペニスを持ち亀頭にキスをする。ゆっくりしごきながら唇をすぼませ先端だけを何度もちゅばちゅばと出し入れする。
「うぅっ……」
すぐにガマン汁が溢れ出てきた。
(ふふっ、じらし返しよ☆)
唾液を垂らしながら裏スジを舌の先でなめ上げる。何度か往復したのち先端から付け根まで一気に口に含み、じゅるじゅると吸いながら舌をからませていく。
「……す、すごい……」
もらす吐息とともにこれ以上ないというほどに硬く勃起していくペニス。
(攻める方も悪くない……ていうか燃えちゃう!)
興奮する神田の姿にアンジェも下半身がうずく。こっそり自分のアソコを触ってみると、ちゅるんと簡単に中指が入ってしまうほど濡れて熱く、太いペニスを挿入されるのを待っているかのようだった。
(あん、もう!あたしが本番ヤりたがってどーすんのよ……!)
「アンジェちゃん……」
神田が身を起こしアンジェに覆いかぶさる。
「あんっ」
チャイナドレスの胸元のボタンをはぎ取られぷるんと乳房がこぼれた。条件反射的にそれを手で隠そうとすると、両手をがっしりと掴まれ阻まれた。
「神田さん……」
神田の息は荒く、瞳は興奮に濡れている。
剥き出しになったアンジェの尖ったピンクの乳首を軽く噛みながら神田が言う。
「イかせてくれる……?」
「……!」
(もうこの際神田さんなら入れちゃってもイイ…………いやダメ!)
アンジェの頭の中で思いが逡巡する。
(それはお店のルール違反! 嬢としてルール違反よ!)
「……でも…………ぁん……!」
その間にも乳首は吸われ、クリトリスはいじられている。快感が波のように繰り返し訪れる。
「気持ちイイですぅ……」
仕事とはいえ久しぶりの情事(しかもなかなかイイ男相手)に判断能力が鈍りまくりの”佳子”なのだった。
(いや、でも本番したら確実にイッちゃうし……)
”おばさん”に戻りたくない、その一心でアンジェは言った。
「……神田さん、あたし本番はダメなんです! ごめんなさい!!」
するとそこにはきょとんとした神田の顔。
「いやあの、もちろん素股で……」
「あ……」
常連で紳士だと言われている神田が店のルールを知らないはずがない。
「そ、そーですよね~っ!」
(あたしのバカーーーー!)
「次も絶対に指名するよアンジェちゃん」
神田は別れ際そう言って見送ってくれた。
神田は最後まで気持ち良くなれたということ、アンジェはお客を気持ち良くしてあげられたということで、ふたりの間には満足気な雰囲気が漂っている。
「ええ、お願いします!」
そう言ってアンジェは送迎の車に乗り込み次の仕事場へと向かった。
2人目は初回の反省を生かし自分が快感に溺れ過ぎないように接しよう、と考えていたアンジェだったが、アンジェのナース姿を見た時点で勃起していたお客はあっという間に果ててしまったので、心配は無用だった。
「アンジェさんお帰りなさーい」
「ただいまでーす」
事務所へ戻ると店長が迎えてくれた。
「本日はお客様2名で計4万円ですね。お疲れ様でした!」
「お疲れ様です、ありがとうございます!」
報酬の4万円を受け取るアンジェ。
(一気に4万円~! すっごい!)
専業主婦としてはどう頑張っても1日では稼げない金額だ。
「控え室にシャワーあるんで良かったら浴びてって下さいね」
「はーい」
(そうだ、このままの姿じゃ帰れないし元の姿に戻らなきゃね……)
身体に注がれるお湯と湯気が柔らかくアンジェを包む。
まだ火照っているような下半身。
軽くシャワーを当ててみる。
「んっ……!」
アソコは過敏なままだった。
さっき2人の男としたプレイを思い出しながらシャワーヘッドを持つ手を動かす。
「あ……あ……」
更に水流を激しくして小刻みに手を動かす。
「あぁ……ん!」
アンジェはプレイの最中ガマンしていたのもあって、あっという間にイッてしまった。
そして”佳子”に戻ったのだった。
「ただいま~」
玄関で靴を脱ぎながら佳子は言う。
「優香? いないのー?」
一人娘の名前を呼ぶが返事はない。
佳子の娘、優香は春に高校を卒業して今は予備校生のいう名のフリーターである。
「まったくどこで何してんだか……」
3日前に帰ってきたきりだ。しかも着替えを取りにきただけで、話もせずにまたさっさと出て行った。どうやら友達の家を点々としているようだ。
「はーあ……」
自分が出掛けていたうちに帰ってきた形跡がないか、佳子はそっと優香の部屋のドアを開けた。
(あら、何かしら……)
ドアを開けてすぐ左手にあるデスクの下になにか封筒が落ちている。
佳子は何気なくそれを手に取った。
学校などからの通知だったら処理しなければならない、と母親としての義務が何となく頭をよぎったからだ。
しかし。
「!」
封筒からすべり落ちてきたのは3枚の1万円札だった。
「……ちょっと……なにこのお金」
優香は今バイトをしていないはずだ。
「まさか……」
ここ最近の優香の言動を思い出してみようとする。そう言えば最近お小遣いをせびってこない。部屋には見たことがない新しいバッグがいくつか置いてある。タグがついたままの洋服や靴もある。
「これって……」
佳子はへなへなと全身の力が抜けていくのを感じた。
「……援助交際……?!」
「援助交際は危ないでしゅーーー!!」
「ぎゃっ!!」
力が抜けていたところに突然背後からの幼児っぽい大声。
「ちょっとアンタ毎回毎回驚かせないでよっ!」
佳子は振り返りほわほわ浮いているキーに「このっ!」と言いながら一発浴びせようとする。
「おっと、佳子しゃん。それはそうとお仕事楽しかったでしゅか~?」
キーは佳子のパンチをうまく避けのんきな顔で質問する。
「仕事は良かったわよ! 4万円も貰っちゃったし……。でも帰ってきたらこれよ……」
さっきまでの充実感はどこへやら、だ。
「もう……なんでこんなことになっちゃうのかしら。昔はすごい仲がいい親子だったのに……」
佳子はどさりとソファに身を投げ出す。
心が落ち込むと疲れが一気にくるようで、身体がだるい。
「優香はね、わたしにそっくりな顔してるの、ふつう女の子は男親に似るって言うけどあの子は小さい頃からわたしに似ててね……」
遠い目になる佳子。
キーもソファに座りうんうん、と頷く。
「一緒に買い物行ったりすると、店員さんが『お姉さんにはこちらいかがですかぁ?』ってギャル服勧めてきてね、いえいえわたしは母親ですよぉ~これはちょっとわたしには若すぎるわーって言うと『ウッソー!信じらんない~! 超似合ってますよぉ~』なんて、姉妹に間違われることもしょっちゅうでね……」
「それはナ・イ」
バッサリ。
「ちょっ、コラ!」
真顔で否定するキーに高速ツッコミの佳子。
「ま、まあしょっちゅうではなかったけどさ!」
正直人生で一度だけである。
「いいじゃない、しんみりさせてよ!」
すねる佳子にキーが言う。
「佳子しゃん、しんみりするよりも対策を考えないといけないでしゅ」
「って言われてもさ、どうしたらいいのよ……」
優香に怒ったところで「はい分かりました」なんてなるわけがない。そもそも帰ってこないし電話も出ない。
「ボクにイイ考えがありまっしゅ☆」
「なに!? お願い教えて!」
藁にもすがりたい気持ちの佳子はがっしりとキーの両肩を掴む。
「どうせならお店に誘っちゃえばいーでしゅよ! メルティーマンゴーに☆」
ペロリと舌を出して得意のキメ顔だ。
「はぁ~? なに言ってんのよっ」
「わぷ!」
佳子に投げ飛ばされクッションの山に埋もれるキー。
「テキトーなことばっか言って、さすがに呆れるわよ」
「いやいや佳子しゃん! お店を通す方が絶対安全でしゅよ~」
もごもご格闘しながらキーがクッションから顔を出す。
「今ドキ援交っていったら出会いはネットでしゅ! プロフィールなんて詐欺し放題でしゅ! 危ないヤツに会う確率も高いでしゅよ!」
「……うん、まあそれはそう思うわよ」
たまには常識的なこともいうのだ、このピンクのトイプーは。
「メルティーマンゴーは常連さんが多いし、一緒に働けば目も行き届くし安全でしゅ!」
「うーん……」
帰って来ない娘。
友達の家に泊めてもらっていると言うがそれも怪しいものだ。援交相手の家かもしれないし、泊める代わりに……なんて……。
それよりは…
「……アリっちゃアリか!」
魔法のピンクローターを手にしてからというもの佳子にはポジティブパワーがみなぎっているのだった。
「そうと決まれば作戦会議ね!」
有言実行、即行動が佳子のモットーである。
「前に帰宅してから3日経ってるからそろそろ帰ってくると思うのよね。早くて明日か、明後日にでも」
「じゃあまずは佳子しゃんがアンジェに変身して……」
「ふむふむ……」
女の勘は鋭いのだ。
翌日。
佳子が洗濯物をバルコニーに干しているとガチャリと玄関が開く音がした。
(……優香ね!)
警戒させないように洗濯物を干す手は止めず、バルコニーから声をかける。
「優香~? 帰ってきたのー?」
廊下を進んでくる優香はちらりと佳子を見て
「……ただいま」
ぼそりとつぶやいて自分の部屋に入って行く。
「お腹空いてたら鍋にカレーがあるわよ」
できるだけいつもと変わらない自然な感じで言う。
「いらない、すぐ行くから」
「あっ、そう……」
佳子は洗濯物を手早く片付ける。
(作戦開始ね……!)
優香が自室でごそごそやっている隙をついてバスルームに駆け込む佳子。
魔法のピンクローターでアンジェに変身した佳子はバスルームのドアを1センチほど開け様子を伺う。
すると着替えを済ませた優香がドタドタと廊下を通り過ぎて玄関で靴を履いているところだった。
(よーっし尾行開始~☆)
バタンとドアが閉まるのを見届けてからアンジェはバスルームを出た。
15メートルほど距離を取りながら優香のあとをつけて行くアンジェ。今回はトレンチコートにサングラスというなりきり探偵スタイルだ。
(あたし、”太陽にほえろ!”ではきっと”トレンチ”って呼ばれるわ……!)
見た目はアンジェでも例えは40代の佳子なのだった。
優香は携帯を見ながらしばらく歩いていたが、一軒のカフェの前で立ち止まった。そして店内へ入ると角の席に座っている若めのサラリーマンに立ったまま話しかけた。
友人、といった雰囲気ではない。
アンジェも急いで店へ入り、背中合わせの席を陣取る。
「……へえーそっかぁ、じゃあ今日これから大丈夫? 俺今日直帰だからさ~」
男の声が聞こえてくる。
「うん、その代わり前払いね」
優香の声。
「へへへ、用心深いなぁ。3万だっけ?」
「そう」
(現場……確認!!)
ガタンと音を立てて椅子から立ち上がるアンジェ。
「ちょっと待ったぁーーーー!」
<第4話に続く>
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第4話は12月9日公開です
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