第6話 - マジカル☆フ~ゾク嬢アンジェり~な - いちご文庫

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小説タイトル

作者情報

  • 松えみる

    アンダーグラウンドシティ・ベルリン在住。
    世界各地から集まった変人たちに囲まれ穏やかでない毎日のなか執筆。小説のほか、性に対してオープンすぎるこの街で繰り広げられるセックスパーティやセックスワークショップなどへの潜入取材依頼も受付中。
    X(SNS)→https://twitter.com/matsuemiru

マジカル☆フ~ゾク嬢アンジェり~な

第6話

小説挿絵 アンジェとしての生活が始まってはや数ヶ月。
家事をこなし娘を送り出した後の、午前遅くから夕方までがアンジェタイムだ。最近ではこの生活リズムにも慣れてきて体調もすこぶるいい。仕事も顔なじみの常連さんが増えたこともあり、リラックスして臨めるようになった。

そんな穏やかなある日。

「アンジェさん新規ご指名です。フライトアテンダントでお願いしまーす」
「はーい!」
本日最初のお客さんは自宅希望だそうで、伝えられた住所をもとに送迎車で送ってもらう。
(ここね……)
よくある中層階のマンションの一室。
きっちりアップにまとめた髪とメイクに乱れがないかもう一度確認して玄関チャイムを押す。
ーーピンポーン
仕事に慣れたとはいえ新規のお客さんのときはいつも、チャイムを押してからドアが開くまでが一番緊張する。
どんな人が出てくるか、あたしを見てどんな表情をするか、第一声は何だろうか……そんなことを思いながら長い数秒を過ごす。
「はい」
ドアの向こうから低い声がして、足音とガチャリと鍵を開ける音、そして扉が開くーー
「!」
どきん!
心臓が止まりそうになった。
「こんちは」
「こ、こんにちは……!」
目の前に立っている男性は、あの日と同じ微笑みでアンジェを出迎えた。
20数年の歳月が一瞬にして巻き戻されたかのような、あの日にタイムスリップしたかのような……。
(……水島君!)
今日1人目のお客さんはなんと”佳子”の元カレだった!
「すごい、本物のスッチーみたいだ! どーぞ、入って」
「あ、は、はい……」
心臓がまだバクバクしていて、返事もままならない。
(こんな……こんなことってある?!)
コスプレの完成度の高さに無邪気に笑っている彼。
当たり前だけど今の彼は、あの頃に比べて皺が増えて全体的に少し太ったみたいだ。でもそれは彼に柔和な印象をプラスしていて、ちっとも劣化なんかじゃなかった。

思い出が、走馬灯の様に頭を駆け巡る。
「アンジェちゃんだね?」
変わらない、低くて柔らかい声。
「はっ、はいそうです……!」
好きだった声。
この声で、『けーこ』と呼ばれていた自分。
「あれ、緊張してる?それとも警戒?!」
「違うのっ……いや、違うんです!」
(そう、いつもこんな風にちょっとふざけてあたしを笑わせてくれてた……)
「ちょっと昔の知り合いに似てたのでびっくりして……」
「そうなんだ」
そう言った彼からはそれ以上何の感情も読み取れなかった。当たり前だ。彼が見ているのは元カノの”佳子”ではなく変身後の”アンジェ”なのだから。
「さ、どうぞ」
「あ、はい……」
奥へと招き入れる彼に言われるがまま付いて行く。
(いつ以来だっけ?水島君と会うの……)
アンジェは記憶の端を手繰る。
(付き合ってたのはあたしが短大生の時……)
もう20年以上前の話ー
彼は隣の大学に通っている有名なイケメンだった。当時人気絶頂だった光GENJIメンバーの最終候補だったなんて噂がまことしやかに囁かれ、私設ファンクラブもあった。ある日突然友人伝いに食事に誘われ、その後すぐに付き合い始めた。誰もが驚愕してうらやんだり嫉妬されたりしたけど、そんな彼に選ばれたということが佳子には誇りだった。そして別れも突然でそれっきりだったのだが、佳子の中ではキラキラした青春の一ページである。
それがまさか20年の月日を経てこんな形で再会するとは一体誰が予想しただろう。

「……あの、1人暮らしなんですか?」
通されたシンプルな1Kの部屋には見たところ必要最低限の家具ーベッド、ソファ、テレビや棚ーしか置いていない。
(もしかして……独身?)
アンジェの胸にささやかな期待がよぎる。
これも神様のいたずらか、プレゼント!?
「ああ、今だけね。単身赴任で1年だけこっちに来てるんだ」
「あっ、単身赴任ですか……」
「うん。家族は九州」
そう言えば風の噂で、福岡のお金持ちの娘と結婚したとか何とか聞いたことがあった。
「そっか……」
自分ももちろん結婚して夫と娘がいる身だから、元カレと再会したところで浮気や不倫をするつもりはさらさらないけれど、少しだけよこしまな気持ちが芽生えていたことは認めなければならない。ちょっとだけ失望している自分がその何よりの証拠である。
「えーっと……じゃあ……」
(あれ?! いつも最初どーやってたんだっけ?!)
元カレ相手だと思うとなんだかいつもの調子が出ないアンジェ。
それを見た水島はアンジェをまだ不慣れな新人だと思ったのか
「アンジェちゃん、リラックスしなよ! あ、そうだ。ちなみに俺予約の時は偽名使ったんだけど、本名は水島って言うんだ。水島タケト。怪しい男じゃないから大丈夫だよ。よろしくね」
そう言って優しくアンジェを抱き締めた。
「……水島……君」
(……知ってるよそんなの!)
そしてキス。
「ん……」
この唇も、知っている。
すると彼の手が、タイトスカートの中に滑り込んできた。
ストッキングの上からアソコを刺激される。
「あ……ん……!」
いつもより過敏になっている。
「きゃ!」
そのままソファに押し倒され両膝を割られるとスカートは自動的にウエストまで上がってしまった。薄いストッキングからレースの下着が透けている。
「すげーエロいスッチー……」
そう言うと水島は乱暴にストッキングのクロッチ部分を裂いて下着をずらし舌を差し込んできた。
「ひゃ……ちょっと……待って……!」
そう言いつつ待てないのはアンジェも同じだ。
水島のテクニックはあの頃の若くてある意味勢いだけだったものとは変わり、ねっとりと緩急をつけて確実に性感帯を突いてくる。
「はぁっ……ああ……ん」
彼の唾液だかアンジェの愛液だかもはや分からないが部屋中にじゅぱじゅぱと湿った音が響く。
「……ねぇもうイっちゃいそう……水島君……!」
押し寄せる快感を止めることはできない。
「あっ、あっ、あーーーん!」
アソコを更に水島に押し付けるような形で身体を反らせながら、水島の熟練舌テクでアンジェはものの5分も経たないうちにイッてしまった。
「はぁ……はぁ…………水島君いつの間にこんなテク……、あーーーーーっ!!」
なんとアンジェは2回目の絶頂で変身が解かれ”佳子”の姿に戻っていた!
「なに、またイッちゃったのか……?へへへ」
アンジェの絶叫が2回目のオーガズムだと思った水島が嬉しそうに顔を上げようとする。
「ダメー!!」
佳子は股で水島の顔を挟み、その隙にソファ脇のバッグからアイマスクを掴み光速で水島に被せた。
「おわっ!」
「め、目隠しプレイよ! こういうのも好きでしょ~?」
そう言いながら水島のシャツを脱がし乳首にキスをする。
「へへっ、悪くないな……」
(セ、セーフ……!いや、まだピンチ!)
最初とは違う意味で心臓がドキドキしている。
出来る限り早くもう一度アンジェに変身しなければならない。バッグから魔法のピンクローターをそっと手に取る。
「水島君……じゃあ……自分で服を脱いでオナニーするところ……見・せ・て」
話しながら一歩ずつ遠ざかる。
「え? オナニー?」
「うん……すっごく見たいな……目隠しされた男の人が自分でするの見たら……もっと興奮しちゃう……水島君も……見られたいくせに」
へへへ、と彼がにやにやしながらベルトを外し始めた時、佳子は既にバスルームにいてアンジェに変身していた。
「っふ~……焦った……!」

部屋へ戻ると彼がベッドに腰掛けて自分のモノをしごき始めたところだった。こっそり背後へ近付き耳元で囁く。
「水島君……あたしもオナニーしちゃおうかな……でもこうする方がもっと気持ちイイかも……」
裸の上半身を彼の背中に這わせる。彼がぴくんと反応する。豊満な乳房で背中を上から下へなぞり、首筋にはキス。耳たぶを軽く噛みながら手を前に回し乳首をくりくりと転がす。その度に水島は「はうっ」とか「あぁ……」と熱い吐息を漏らす。アイマスクをされたことでアンジェの次の行動が分からず、触覚だけに頼ることになるので全身が敏感になるのだ。愛撫をゆっくりと緩急付けながら行うことで彼のペニスはまだ触れてもいないのに大きくなり、先端から透明の液体が溢れた。
アンジェは彼の前にそっと移動して、そのペニスをローションを塗った乳房で挟む。アンジェの巨乳ならばペニスを全て包むのに十分な大きさだ。
「はぁっ……」
我慢できなかったのか水島がアイマスクをむしり取った。すると目の前には、ペニスをおっぱいで挟みながらいやらしく上下させるアンジェ。
「……くぅっ、俺もうダメ……」
「イカせてあげる……」
水島を仰向けに寝かせ騎乗位素股に入る。ローションでテラテラ光るおっぱいを揺らしながらの腰と手の絶妙なテクニック。
眉間に皺を寄せながら呼吸が更に早くなる水島。
「あああ……イク……イク……あぁっ!」
大量の精液がほとばしった。



「すごい……エロかった……すごい良かったよ……!」
「そんなに良かったなら、あたしも嬉しいな!」
既に時間ぎりぎりだったが、アンジェも恋人時代に戻ったような気分で水島の隣に寝そべった。
(少しくらいならいいよね)
すると水島はそのままアンジェを引き寄せて抱き締めた。
「水島君……」
懐かしい、この感じ。彼の腕の中にすっぽり収まってそのまま眠りに落ちていく感じ。愛だの恋だの、信じて疑わなかったあの頃の感じ……。
「いやーこんなに気持ちよかったの久々だよ……」
「ホント?」
「うん。実は俺、嫁とは長いことセックスレスなんだ」
「そ、そうなんだ……!」
思わずうちも一緒! と言いそうになるアンジェ。
「それに俺、女運悪くて」
「そ、そうなんだ……?」
これには同調しかねる。
「そうだよ、昔っから! アンジェちゃんみたいな子に出会ったことがない」
「あたしは特別だから……!テヘ☆」
(でもホントのあたしには出会ってるどころか……付き合ってたんだからね!)
真実を告白したい衝動にかられる。
そうしたら、水島君はどんな顔をするだろうか? 何を思うだろうか?
『やっぱりけーことは肌が合うな』とか『何で俺ら別れちゃったんだろうな』とか『実は結婚したこと後悔してるんだ。もしけーことやり直せるなら……』
(なーんて?! なーんて?! キャー!!)
妄想でひとりお祭り状態のアンジェの気持ちを知ってか知らずか、水島はアンジェの腰周りを撫でながら話を続ける。
「何で、もっと早く君みたいな子に出会えなかったかな……例えば結婚する前とかさ」
「え!」
もしかして、もしかして、妄想が現実にーー
「そ、それって……それってどういう……意味……?」
水島がアンジェの瞳をじっと見つめる。
ドキドキドキドキ……
こんなに密着していたらこの胸の高鳴りが伝わってしまう。

「けーこ……」
「え?!」
思わずアンジェは起き上がって水島の顔を正面から覗き込む。
水島の口からはっきりと発せられた『けーこ』。聞き間違いではない。
「な、なん……で……」
(もしかして水島君は全てお見通しだったの!? その上であたしを指名して…?!)
アンジェの心臓の鼓動が限界に近付く。
胸がいっぱいで息が苦しい。
これが運命というやつなのかもしれない。
赤い糸が再び2人を結びつけようとしている。

いいの?
夫や、娘を裏切れるの?
でもこんな機会二度とないかもしれない。
そうよ、一度きりの人生……こうやって再会したことがきっと”答え”なのだ……!

あたし、あたし決めたよ!
「みずしまく……!」

「とか、よーこ、とか」
アンジェの人生の一大決心に被せるように水島が言った。
「へ?」
「きょーこ、とか」
どうやらまだ話は続いていたようである。
「あ、う、うん?」
一応相づちを打ってみるがいまいち話が掴めない。
「俺さー、昔そういう”けーこ”とか”よーこ”とか地味な名前の女と付き合ってたんだよ。あ、まさこってのもいたなー。名前が地味なら顔も身体も地味でさあ~、言わずもがなセックスも!」
「……!」
「せっかくの俺の若かりしムスコを無駄遣いしたぜ」
な、何を言ってんのアンタ?! 本当はそう言いたいのに、言葉は出て来ずに口だけが池の鯉みたいにパクパクしている。
「いやまじであいつらマグロだったんだよー! マグロ1本釣り。ははは」
鯉どころかマグロ呼ばわりである。
「俺が”ヤッてあげてる”ってことに気付きもしねーの」
完全に、冷めた。瞬間冷凍庫より早く。全ての期待や妄想から。
すると水島が甘えた声を出しながら股間を擦り付けてきた。
「ねえ、アンジェちゃんお願い! 1回でいいから本番ヤらせてくれない?」
「…」
「プラス3万払うからさ! ね、頼むよ! ん…アンジェちゃん?」
「…」
「あれ、震えてる? どうしたの?」
怒りとか、失望とか、ちょっとでもコイツに何かを感じた自分の恥ずかしさとか、そんな思いがぐちゃぐちゃに混ざってアンジェの肩をわなわな震わせていた。
「寒いの? だったら俺がもう1回熱くさせてやるよー!」
「うるさーい!!」
びったーん! という派手な音と共に水島の頬が真っ赤になった。
覆い被さろうとした水島をアンジェは思い切りビンタしたのだ。
「アンタって最っっっっ低!!」
今度は水島が口をパクパクさせる番だ。
「本番は禁止されておりますし既に制限時間が過ぎておりますのでこれにて失礼致します!!」
全裸のまま頬を押さえて放心状態の水島をベッドに置き去りにして、アンジェはさっさと荷物をまとめ部屋を出た。

「バカヤローーーー!!」

他には、何も言うまい。

<第7話に続く>


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第7話は1月20日公開です

■注意■

  • ●この小説はすべてフィクションであり、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
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