第8話 - マジカル☆フ~ゾク嬢アンジェり~な - いちご文庫

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いちごなびからの応募でもらえる、入店応援金15,000円
小説タイトル

作者情報

  • 松えみる

    アンダーグラウンドシティ・ベルリン在住。
    世界各地から集まった変人たちに囲まれ穏やかでない毎日のなか執筆。小説のほか、性に対してオープンすぎるこの街で繰り広げられるセックスパーティやセックスワークショップなどへの潜入取材依頼も受付中。
    X(SNS)→https://twitter.com/matsuemiru

マジカル☆フ~ゾク嬢アンジェり~な

第8話

小説挿絵 「今日は銀行とクリーニングと……八百屋も行かなきゃなー。うーん……ま、いっか、このままで」
アンジェは玄関の姿見で一度全身を映すも、結局そのまま家を出た。
娘の優香が3日ほど友達と旅行に行っているので、佳子は昨晩からアンジェに変身したきりだ。今朝は午前中にいつもお世話になっている上得意から指名が入ったので出勤しなければならなかったし、変身・解除と毎回、魔法のピンクローターでオナニーしてイクのは体力を使うので、出来れば一度変身したら長時間キープしたいのだ。このローターはなんせ魔法アイテムなのでその快感レベルは段違い、毎回イッていたら身体に残る快感の余韻で家事どころではなくなってしまうのだった。


「いらっしゃい! 今夜の献立は? 豚コマどう?」
「美人には負けとくよ~!」
アンジェがやって来たのは、東京の古き良き下町の風情が残る商店街だ。
「活きのいいサンマとアジが今日だけ大特価! どうお姉さん!」
通りを歩けば売り子からの声があちこちから飛んでくる活気のある場所で、佳子は昔からここが好きだった。
「今日はお野菜を買いにきたの~ごめんなさーい」
魚屋のおじさんにそう答えながら、三軒先の八百屋へと向かう。
「らっしゃい!」
と、短髪で日焼けした爽やかな青年がアンジェを出迎えた。
「こんにちは~」
(……あら、息子さんかしら?)
見慣れない顔だ。ここは佳子と顔なじみの老夫婦が切り盛りしていたはずだが。
「今日はほうれん草が安いよ! どうですおひとつ?」
「あらそーお?」
息子だろうがただのバイトだろうがイケメンならそれでいいのだ。アンジェはさっそくほうれん草を手に取ってみる。
「サービスするよ!」
「ホント~?」
「うんホント。俺、美人に弱いから」
美人とかセクシーなんて言われ慣れているアンジェだが、若いイケメンに言われたら嬉しいのは事実。
「もー! 若いくせにお世辞がうまいんだから!」
嬉し恥ずかしアンジェが、ばしっ、と二の腕を叩くと彼は「ぅお!」と言いながら隅に積まれた段ボールに突っ込んだ。大きな音を立て崩れ落ちてくる段ボールに埋まる彼。
「きゃん!! ヤダ、大丈夫~?!」
つい怪力を発動してしまい焦るアンジェ。
『きゃん!』じゃないだろうが! と客全員が心の中でツッコミを入れる。
「大丈夫ですか?!」
アンジェは段ボールを除け彼に手を差し伸べる。
すると彼は
「いてて……、な~んてね!」
と言って身軽に立ち上がった。
「え?」
「ちょっとリアクション大げさすぎたかな? ウケるかな~なんて……ごめんなさい皆さん! どうぞお買い物を続けて下さい! ほうれん草がすすめですよー!」
彼がそう言うと他の客達は「なーんだ」とか「面白い人ね~」などと言いながらそれぞれの目的へと戻って行った。
(この子……)
アンジェの怪力は本物だし、事実彼の二の腕は手形で真っ赤になっている。なのに、アンジェがおかしな女だと思われないよう、客の好奇の目をそらすよう、咄嗟に嘘をついてくれたのだ。
「ごめんなさい……。それとありがとう」
アンジェがこっそり言うと、彼は「今日から筋トレ増やさなきゃ」と言って笑った。黒目がちで小犬みたいな可愛い笑顔だった。
(か、かわいいー!)
よく見れば、肌はすべすべでほっぺたが自然に上気してピンク色になっている。笑うとぷっくりした唇から八重歯が覗く。
「じゃあほうれん草3束頂くわ! あとかぼちゃと白菜もお願い! あ、あとこのエリンギと舞茸も頂くわ!」
テンションが上がって次々に注文するアンジェ。ちなみに今晩の献立は決まっていない。
「まいど!」
品の中から一番新鮮な物を手早く選び、アンジェの差し出したエコバッグに手際よく詰めていく。
(八百屋もやっぱりプロフェッショナルなのねぇ……うちの旦那だったら新鮮な野菜の見分け方なんて絶対知らないわ)
感心しながら彼を眺めるアンジェ。
会計を済ますと「これサービスです!」と言って兄ちゃんはビニール袋を手渡してきた。
「まあ、ありがとう! 何かしら?」
手に取ってみるとそれはつやつやと黒光りしている新鮮そうな茄子。
「あら、固くて……いいサイズ……」
連想する物はひとつしかない。言わずもがな……アレである。
(……やーね! 職業病って!)
思わず想像してしまったそれを頭から振り払い、ごそごそと茄子を袋に戻す。
「茄子って、焼き茄子、天ぷら、麻婆茄子にグラタン、パスタ、和洋中何でもイケるでしょ?」
「うん、イケるわね」
「いっぱい作り過ぎたら……俺、食べに行くんで呼んで下さい」
ちょっと照れながら言う彼。
「そーいう魂胆ね!」
でも悪い気はしない。
「いやっ、違いますよー!」
ふたりは顔を見合わせてあははと笑い合った。

数日後クリーニング店に洋服を引き取りに行く途中、例の八百屋の前を通ると、彼が重そうな段ボールをいくつも抱え忙しそうに働いていた。
パーカーに膝が破れたジーンズ姿だが、腰にきりりと締めた前掛けがとても良く似合っていた。
(スポーツしてる姿と働いてる姿はカッコ良さ3割増って言うけど……ホントね)
つい足を止めてその姿を追ってしまう。
品出し中にも接客は怠らず、常連らしき人々に挨拶をして、子どもにみかんをサービスしてあげたりする。
今日は野菜を買う予定はないが『こないだサービスしてくれた茄子がすごく美味しかった』くらいのお礼は言いに行ってもいいかもしれない、そう思っていたが、彼の仕事を邪魔したくないとアンジェは何も言わず立ち去ろうとした。
しかしその時
「あっ! おーいお姉さん! まいど~!」
彼がアンジェに気が付いて手を振っている。こうなったら寄らない訳にはいかない。
「どうだった? あの茄子、良かったでしょ?」
見せるのはあの小犬スマイルだ。
「うん……すごく良かった」
実際優香もおかわりしていた。
「今日は? あ、そうだ新鮮なキャベツ入ったんだ。採れたてだよ!」
そう言って取りに行こうとする彼をアンジェは制す。
「あ、ごめんなさい今日はまだ家に野菜たくさんあるから……」
「そっか、じゃあまた今度お願いします!」
彼はそう言うと「どこのキャベツ?」と割り込んできたおばさんを接客し始めた。
「あっ……」
(な、なんか悔しい~!)
簡単に引かれると追いかけたくなるのが乙女心だ。
「あっ! そうだ思い出したー! 今ちょうどうちにひき肉があるからロールキャベツでも作ろうかしらー?!」
アンジェの大声に他の主婦達が振り向く。
彼も振り向いてにっこり微笑んだ。
「ここのは葉が特に柔らかいからロールキャベツに向いてるよ」

大きなキャベツが3玉、クリーニングから戻ってきたコートが4着、アンジェの両腕をふさいでいる。おまけにサービスでもらったポンジュース1.5リットルが肩に食い込んでいる。
(さ、さすがに……3つは……買い過ぎた……)
よろよろと来た道を戻るアンジェ。
彼に接客されるとなぜかいらない物まで買ってしまう。
(彼がホストをやったら全財産貢いじゃう自信があるわ私……)
しかし、彼は八百屋なのだ。若くて溌剌としたイケメンが、地元の商店街で一生懸命に働いている。それがいいのだ。
「わっ!」
そんなことを考えながらニヤニヤしていると突然両肩にさらなる重みが。
「キャベツダイエットでしゅか~? おばさんになると新陳代謝が落ちましゅからね~」
「キー!」
突然現われたキーが肩に乗っかって肩車させられている状態だ。
「あんたこそダイエットしなさいよ~! 重いー!」
「ゆるキャラはぽっちゃりしてるほーが可愛いんでしゅ☆」
「は? あんたゆるキャラだったの? どーりで大使には見えないはずだわフン!」
「あっっ、しまったでしゅ……いや、フーゾクの国では大使でしゅけど、ボクって日本でウケそうでしょ? だからゆるキャラとかで売り出そうかなって……」
減らず口のキーを言い負かして気分がいいアンジェ。
「そーだ、あんた今日うちで夕飯食べてけば? 野菜いっぱい買っちゃってさ」
「ボクは肉食でしゅ! 野菜食べるとお腹壊すでしゅ! じゃまた!」
機嫌を損ねたのかさっさと姿を消すキー。
(何しに来たのよーあの子……ヒマなの?)
いちおう国の為にエネルギー回収という大切な仕事をしているのだが、アンジェにすら忘れ去られるキーであった。

「ねぇママ、最近ダイエットでもしてるの?」
夕飯の食卓についた優香が言う。
「だからダイエットしてないってば!!」
どいつもこいつも! と、思わず口調が強くなる佳子。
「え、なに怒ってんのよ。最近野菜ばっかり出てくるから聞いただけだよ」
今夜もテーブルにずらりとならんだ野菜料理。
「ヘルシーでいいじゃない! 優香こそ最近太ったからちょうどいいわよ」
「えー! 私太った~? まじー? やだどうしよー週末コンパなのにぃー!」
騒ぐ優香の隣で夫は何も言わずもくもくとロールキャベツを食べている。「美味しい」とも「まずい」とも言わない。そんなことにも慣れた。今週は2回帰ってきたのでまだマシか、なんて思いつつ佳子はかぼちゃのグラタンを口に運ぶ。

何度かこの八百屋へ通っているうちに彼の名前が分かった。
蓮斗21歳。老夫婦の親戚らしく、八百屋経営の修行に来ていたのだが、その才能と真面目な態度を店主に見込まれて既に店を任されているという。
アンジェの方はというと、近所に住む新婚の若妻、ということにしてある。
そう教えた時の彼の残念そうな「そっか、結婚してるんだね」という返事が嬉しかったりして、(あーあ、20年前から彼がここで働いていたら良かったのに!)と、20年前彼は1歳だということは無視して勝手に妄想するアンジェであった。

「あ、いらっしゃい!」
「こんばんは~!」
アンジェがやって来ると心無しか彼も嬉しそうな気がする。
「今日は遅かったね」
指名が立て続けに入ったので、閉店間際になってしまった。
「そうなの、ちょっと忙しかったから……」
しかし他に客もいないので彼とゆっくり話せるかと思うと嬉しい。
「今日は何が欲しい? いいやつは大体もう出ちゃったけど……」
「そうねえ……」
数少ない店頭に残った野菜を物色するが、実はそんなことどうでも良かったりする。日常のささいな一コマで彼とお喋りしたり、可愛い笑顔で目の保養をするのがアンジェの癒しになっていたからだ。
「あ、そうだ……バックヤードにまだ残りがあったかも」
彼がぽそりとつぶやいた。
「ホント?」
実際野菜を買いに来たのではなく、彼に会いに来たのだから買えなくても構わないのだが、そうこうしているうちに「来て」と言って彼がアンジェの手を取った。
(!)
手をつないだだけなのにアンジェの心臓はドキドキし始める。
(ちゅ、中学生じゃないっての!)
自分にツッコミを入れるアンジェ。
彼の手は、普段から力仕事をしている人の、分厚くてごつごつした手だった。
バックヤードは薄暗く人の気配もない。
(……これって)
アンジェの予感が現実になる。
突然振り返った彼が、身体でアンジェを壁に押し付ける。
「……キスして……いい?」
耳元で囁かれ、思わずその熱い息にぞくぞくしてしまうアンジェ。
答える前に唇を奪われた。
「ん……」
ぷっくりとした弾力のある、あの唇だ。

お客相手のプレイでもない、ストーカーやバカな男に無理矢理ヤられるわけでもない、前から「ちょっとイイな」と思っていた男の子に迫られているこの状況ーしかもここは彼の職場ー閉店間際とはいえ完全に店を閉めた訳ではなくいつ人が入ってくるか分からないーこの状況。
(……あん、もうっ……)
アンジェはキスだけで濡れ始めた自分に気が付いた。もぞもぞと脚をクロスさせてそれを誤摩化そうとする。いや、違う。アンジェとアンジェのアソコはさらなる刺激を求めていた。
彼の指先でクリトリスをいじり回して欲しい、
太い指を濡れたアソコに突っ込んで欲しい、
そして立ったままここで……
お互いに息が荒くなり、ぬるぬると舌が絡まりあっては離れ、更に求め合うふたり。彼の手がスカートをめくりアンジェの太ももやお尻や背中を撫で回す。アンジェは胸を彼に押し付けて自ら乳首を刺激しつつ、彼の股間周辺をまさぐる。ジーパンの上からでも分かるほど彼のペニスは固く勃起していた。

(浮気じゃないから……これは)
アンジェは自分に言い聞かせる。
蓮斗がアンジェの両脚の間に自分の脚を割り込ませて股を開かせる。
(ていうかあの人こそ浮気してるし……あたしばっかり我慢することないじゃない……)
「あんっ」
ついに彼の指がアソコの割れ目をなぞり始めた。
「あぁぁん……うん……」
アンジェが吐息を漏らす回数に比例するように彼は興奮していく。そしてそんな蓮斗の姿を見てアンジェも興奮する。
「もっと……ちょうだい……」
(これは……ただの息抜き。たまには……いいよね)
「いいの?」とでも言いたげな彼の瞳に、激しいキスで応える。
蓮斗の指が下着の隙間から挿入される。
くちゅ、という音がする。
「すげー、濡れてるよ……」
「あぁぁ……ん!」
指を2本入れられながら同時に親指でクリトリスをぐりぐり刺激される。
「スゴい……イイよぉ……あぁ……ん」
このままではイッてしまう。
(だめ……変身が解けちゃう!)
「蓮斗君、フェラ……させて……」
アンジェはそう言って彼の指から逃げると、彼の前掛けを外し、ベルトを外し、ジーパンのボタンを外し、チャックを下ろす。ジーパンが床へ落ちて残る一枚、ボクサーショーツをゆっくりと脱がすと、押さえつけられていたペニスが勢い良くグラインドし出てきた。アンジェはひざまずくとそれをいきなり付け根までくわえ思い切り吸い上げた。
「あぁぁっ……!」
蓮斗が悲鳴にも似た喘ぎ声をあげる。
舌を絡ませながら何度か往復しただけで、若い彼は「うぅ……ダメだイキそう」と言う。
「イッてもいいよ……」
アンジェは言うが
「いやダメ……立ちでこのまま入れていい? もっと気持ち良くさせてあげれるから……」
そう言ってアンジェを立たせて、右ももを抱える。
蓮斗のペニスはまだ十分すぎる角度で勃っている。
「うん、いいよ……」
そう言いつつアンジェの頭に夫の姿がちらちらとよぎる。
(……もう! 何でこんな時に!)
まぶたを開けば目の前には、夫よりも何歳も若く、イケメンで、きれいな身体の男がいるのに。
したい、と思った相手なのに。
こんなに濡れてるのに。

ふと、蓮斗がアンジェの髪を撫でながら言った。
「……もしかして……したくない?」
「え?」
逡巡する気持ちが知らず知らず態度に出ていたのだろうか。
「イヤなら……無理にはしないよ」
抱えていたアンジェの脚をそっと下ろす。
「あ……ご、ごめん」
(な、なんて紳士な子なの!)
ここまできているのに無理強いしない彼、若くてヤリたい盛りだろうに相手の気持ちを考えて我慢できる、そんな彼に再び胸がときめくアンジェ。

「あ……」
アンジェは自分の心の中のある事に気が付いた。
「どうしたの?」
「あたし……分かった……」
頭のどこかをずっと覆っていたもやもやしたカーテンがバッサリと切って落とされたようだ。
自分が失っていたのはこんな風に『人を想う心、ときめく気持ち』だったのではないだろうか。
キーの言った『大事な忘れ物』、その意味が今やっと分かった。

「ごめん……あたし行くね……」
アンジェはそう言って乱れた服装と髪を直す。
彼は黙ったまま、寂しそうな瞳で少しだけ微笑んでみせた。
「ありがとう」
アンジェはそう言って彼にもう一度だけキスをした。
アンジェの姿でここを訪れることはもう二度とないだろう。
でも、本来の佳子の姿で、自分はずっと彼を見守っていくだろう、そうアンジェは思った。

<第9話に続く>


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第9話は2月17日公開です

■注意■

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